米欧科学者の対比、そして科学と表裏一体の哲学 |

今日もお昼からのセミナーへ出かける。上の写真に見るように、美しい映像が次から次に出てきて恰も美術作品を見るような感覚でお話を聞いていた。その映像に劣らず興味深い内容で、深い問題について考えさせるものだった。敢えて言えば、哲学的な問を抱えている研究者と見た。
講師はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のトニー・ドゥ・トマゾさん。ホストもアメリカ人でパスツール研究所のアルバート・マシューさん。セミナーが終わった後、日頃抱えている問題についてトニーさんと話をしていると、余りにも近い過去のデジャヴュが。アルバートさんが、お昼を一緒にしませんかと声を掛けてくれる。2時間ほどのデジュネで興味深いお話を伺った。

Dr. Anthony de Tomaso (Univ California Santa Barbara) & Dr. Albert Matthew (Pasteur Institute)
二人のアメリカ人研究者の話を聞きながら、昨日の話との対比が明らかになっていた。一番大きいのはアメリカ人の場合、哲学的側面を考えの中から削いでいるようなところがあるので、一般的には事実にしか興味を示さない、あるいは事実をとことん突き詰めるところがある。それはある意味で大きな強みにもなっているように見える。今日のトニーさんのように根本的な問題を考えようとする哲学的傾向を持っている人もいるが、事実とそれを捉える精神との間に遊びが全くないくらいに厳しく事実に迫ろうとするところがある。こちらの科学者の場合には事実を捉える精神にまだ遊びの部分が残されているように感じていた。ただ、今日のお二人は哲学に対して開いていて、非常に柔軟であった。そのためか、出ていた話題はいずれも動物の存在の意味を考えさせるものが多く、刺激的で非常にためになった。
このことと関連して、パリが6年になるアルバートは、こちらの文化にはものごとを深く捉えようとするところがあるとトニーに説明すると、トニーの方は、この街に降りるとどこか考えさせるような雰囲気が漂っていると返していた。わたしのこれまでの経過を聞かれたので説明すると、そんなことが起こったのですね、面白い、あなたは本当にワンダラー(1$ではなく、wanderer)ですね、といつもの言葉をトニーさんから頂戴する。またアルバートさんからは、いずれわたしの妻を紹介すると言われる。訳を聞いてみると、彼女は中国系アメリカ人で、現在リヨン大学で哲学(言語の進化)を研究しているという。彼女の専門は最近問い合わせのあった話題とも繋がり、不思議な気分が襲っていた。お二人とはこれからも連絡を取り合うことで別れた。
