ブログ6年目の初日に ―― すべては決められた出会い |
昨日の朝は久しぶりの快晴。
バルコンに出て、その空を味わいながらシガーを口にする。
氷点下ながら耐えられる寒さであった。春はもう少しという感触を得る。
今年のS氏からの年賀状に、京都の彼の研究室に来ていた人がパリに帰ったので会ってみてはいかがですかとあり、アドレスが添えられていた。メールで連絡を取り合っていたが、お忙しい日程の中、やって都合がつき会うことができた。お話を伺うと、ご両親が日本人で、生まれてすぐにこちらに来たという青年医師。当然のことながら中身はフランス人で、御両親もこちらにお住まいとのこと。PS病院近くのイタリアレストランで拙いフランス語を聞いていただきながら、興味深いお話を伺うことができた。仕事の話でいくつか面白いことが出てきたので、論文を送ってもらうことにした。
また、こちらの大学の教授が偉いのに驚いたという話から教育の話題になった。具体的に言うと、教授と学生の間に壁のようなものがあり、友達のような感覚にはならない。そのため、私などは教授との距離感の取り方に神経を使う。これは予想外のことであった。彼の反応は、教授になるにはいくつかの段階を経なければならないので尊敬の対象になるのは当然というものであった。以前に、学生が教授を評価するなどということはフランスの文化にはない、というフランス人医師の意見を紹介したことが蘇ってくる。
こちらでは高校3年で哲学があることは既に聞いていたが、中学からラテン語、ギリシャ語をやるようで、彼はギリシャ語を選択し、古代の哲人の文章などを訳したりしていたようだ。今頃になって哲学を始める人間に対しても、非常にいいですねと言ってくれていたが、彼自身は今は科学的な医学に忙しいようであった。
ところで、丁度5年前の昨日、ブログというものを始めたことに気付く。前ブログの 「ハンモック」 はフランス語を学ぶ過程を記すことが当初の目的だったが、ある時点からそれが変質してきた。そして、Paul Ailleurs なる人格が自らの進む道にも大きな影響を持つ存在にまで成長してしまった。これは全く予想もしなかったことである。しかし振り返ってみると、ブログを始めた時期が花粉症の時期と重なっていることもさることながら、自らの進む道を模索し始めた時とも奇妙に一致している。もしそうだとすると、このような展開はある意味では当然の帰結だったのかもしれない。「ハンモック」 は今も不特定多数の方に訪問していただいている。この場が自らのためだけではなく、どなたかためのお役に立っているとすれば望外の悦びである。これからも何かの異変がない限り続けて行きそうな営みになりつつある。
" Le hasard n'existe pas, il n'y a que des rendez-vous. "
(Paul Éluard, 14 décembre 1895 - 18 novembre 1952)
「偶然は存在しない。決められた出会いがあるだけだ」 (ポール・エリュアール)