フランスの出版界 |
予定通りの日々が続いている。午前中は語学学校へ。前回ビデオなどで聞いたニュースの原稿が渡されたが、初めての表現が至る所に見られる。これでは細かいニュアンスは掴めないだろう。若い方たちは日頃からフランスの報道や生の文化に敏感に反応しているようでいろいろと知っているが、私の場合にはなかなかその気にはならない。この傾向が改まる気配は今のところ見られない。
ところで、今日の課題はメディアテクで好きな新聞を選び、その全体の説明した後に記事を一つ選びコントランデュするというもの。私が選んだのは手に取った最初の新聞の最初に目に入ったもので、1週間ほど前のフィガロ紙の文化欄にあった Salon du Livre が終わるという日にフランスの出版業界を分析した記事。この不況の中で出版業界はその影響をほとんど受けていないのはなぜかについて書かれてあった。先日フランス人の読書傾向について触れたこともあり、興味を持って読んでいた。
まず、今年の Salon du Livre を訪れた人は20万人に上り前年比で4万人の増、会場での売上は20%増で、その盛況振りが窺われる。音楽や映画 (CDやDVDなど) の業界が最も影響を受けているようだが、2002年は13億ユーロ、昨年は5億3千万ユーロの減となっている。その理由としてこの記事では4つの要因をあげている。
一つは心理的なものでこれが重要な要素になっているようだ。読者の皆さんは画面で読むよりは紙に触れたいと思っている。映画や音楽をダウンロードして楽しむのに好意的な人は40%に及ぶのに対して、本の場合には僅か5%しかいない。またネットでの本の購入は6%だが、書店では60%になっている。読者は本に触り、眺め、ページを捲りたいと思っていて、紙の媒体はかけがえがない (irremplaçable) ものとして捉えている。
それから出回っている本の多様性をあげている。これは意外だったが、年間4-5冊しか売れない本が売り上げの大部分を占めていて、ベストセラーの売上は全体の僅か5%だという。2000年の新刊は4万冊、2008年になると6万冊を超えている。つまり、どのような読者の嗜好にも対応できる品揃えがされているということになる。ちなみに CD、DVD の方はベスト100までで売上全体の半分に達している。
三つ目の要因は 1981年の書籍定価法 (Le prix unique du livre) によって再販制度が認められているため。CDなどは認められておらず、数年で市場から姿を消す。
最後はお客さんの要求に答える書店員の方々の努力となっている。本を愛する人は、人や物との直接的な接触を求める傾向が高いということになるのだろうか。