時の流れを眺め、アンダンテ・カンタービレに辿り着く |
Tchaikovsky "Andante Cantabile" (Rastrelli Cello Quartett)
今日は一日閉じ籠って仕事でもしようという気になる。朝の内はバルコンで構想を練り、イザという気になるがなかなか手が動かない。しばらく時の流れを眺めることにした。そうすると何でもないようなことが大きなことに見えてくる。暇のなせる技なのか。
先日街を歩いていると、杖をついて歩いている老紳士が歩みを止め、後ろから来た私の方に素晴らしい笑顔を向け何かを話し始めた。iPod のイヤホンを取り、笑顔で応対していたように感じた。自分でも珍しいことがあるな、と一瞬思ったからだ。「若い頃自転車で転びましてね」 それだけ言って再び穏やかな笑顔に戻っていた。" Bonne journée ! " とでも言うべきだったのでは、などと思いながら先を急いでいた。
郵便局だっただろうか。あるいはモールのようなところだったかもしれない。モニターに次の言葉が映し出されていた。
" La politesse coûte peu et achète tout " (Montaigne)
「礼儀にほとんどお金はかからないし、それですべてが買える」 (モンテーニュ)
紅茶に砂糖を少し上から入れてみる。
砂糖の水を切る音が聞こえる。
スプーンで砂糖を混ぜる時、カップに当たって音を立てた。
いずれの音も美しく聞こえた。
以前に取り上げた(2010年2月27日) " Avec Tolstoï " (トルストイとともに)を書いたドミニク・フェルナンデスさん(Dominique Fernandez) さん(80歳)がラジオ・クラシックのゲストで話している。声だけでは80歳には聞こえない。ロシアの音楽家、チャイコフスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ダヴィッド・オイストラフ、ヴァレリー・ゲルギエフなどの名前が出ている。
トルストイはロシアへの愛情に溢れた作家だという声が聞こえる。今、トルストイの神殿(le temple)にある音楽とフェルナンデスさんが考えているチャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレが流れ始めた。