" La Rafle " を観る、それは 「ヴェルディヴ一斉検挙」 のことだった |
今日はなぜか土曜のような錯覚に陥っていた。細々としたことをやりながら時間を過ごし、夕方 La Rafle という映画を観るため外に出る。La Rafle とは 一斉検挙 (arrestations massives) のことで、ここでは第2次大戦中のパリのユダヤ人に対する行為を扱っている。この映画も先日コロン・モリスで見ただけで、詳しい内容は知らずに出かけた。映画は、この歌を背景にヒットラーがパリに入る映像から始まった。
暫くの間、エディット・ピアフの名前を引き出すのに苦労していた。振り返ってみると、よく知られた音楽が印象的に使われている映画だった。ここでも話題にしたショパンのピアノ曲、それからペールギュントの 「ソルヴェイグの歌」 が子供たちが列車で連れて行かれる時に流れていた。
物語の流れは特に驚くこともなく、粛々と最後に向かう。人生の流れがぶつぶつと切断されていく様が描かれている。何気なく続くはずの日常の中に、次々と別れが現れる。まずドイツ軍と協力したフランスが、ユダヤ人をエッフェル塔が見える巨大な屋内競輪場に強制的に連行し、劣悪な条件で収容する。1942年のこと。それからロワレにあるボーン・ラ・ロランドの移送キャンプ (Le camp de Beaune-la-Rolande) に移動。この様子を見ている時、すぐに昨年訪問したアウシュヴィッツの情景が重なり、夢物語ではなく非常に身近に感じていた。この間、男、女、子供が順次引き離され、最終的にポーランドかドイツのガス室に送られることになる。
時は1945年を迎え、パリが解放される。最後に、移送キャンプからの脱走に成功した子供が出てくるが、家族をすべて失っている。エンディングはドビュッシーの 「月の光」 (Clair de lune)。最後まで味わってから帰ってきた。
後でわかったことだが、この映画で扱われている出来事はイヴェール競輪場(ヴェルディヴ)の一斉検挙 " Rafle du Vélodrome d'Hiver (rafle du Vel' d'Hiv) " として知られる有名な事件であった。今回触れることはできないが、この事件の背景ではいろいろなことが起こっていたようだ。事件の詳細は上のリンクから。なお、英語の場合はこちら (Vel' d'Hiv Roundup) から。日本語の情報は少ないが、こちらにスケッチがある。
ところで、以前に触れたロマン・ポランスキーの "The Ghost Writer" を先日観たが、私の中にはほとんど入って来ず、"ça ne vaut pas la peine" だろうか。観た時の状態なのか、この映画のせいなのか、などと考えていたが、今回生の人間を扱っていることがはっきりわかる La Rafle を観て少しはっきりしてきた。それは、The Ghost Writer の肌触りが硬質で、敢えて言えばプラスチックの肌触り、あるいは鋭角的なものに触っている印象があり、どこか異次元のお話のように感じていたためではないか、というところに落ち着いた。