2010年は国際生物多様性年 The International Year of Biodiversity |
新しく来た雑誌 Science で、今年は国際生物多様性年 (The International Year of Biodiversity) に当たることを知る。日本では宣伝されているかもしれない。その会議が今年10月に名古屋で開かれることになっているからだ。日本の関連サイトは、こちら。この記事を読んでみたい。
今や絶滅の危機に瀕しているのは47,677種、その恐れのあるのが17,291種。それは、鳥類の12%、哺乳類の21%、両生類の30%、暗礁を構成するサンゴの27%、球果植物門(松などが含まれる)とソテツ類の35%に及ぶ。野生種は40年前に比べると30%、マングローブの森林は30年前に比べ20%、海草の生息域も30年前に比べて29%が失われている。
この生物多様性の消失は、将来人類に具体的な害を及ぼす可能性がある。2009年の報告によれば、世界で最も貧しい11億に及ぶ人たちは自然から直接食料や水を得ており、伝統的な文化にも自然が深く関与している。生物多様性の消失による経済的な損失は、1.4兆から3.1兆US$になるという。それだけではなく、自然から人間が得る驚異と畏敬の念を奪うことにも繋がるだろう。
ただ、暗い先行きだけではなく、世紀を超えた自然保護の努力により、ある程度の効果が出ている。例えば、この努力がない場合に比べ、鳥類の絶滅は25%以上防ぐことができた。それから世界中の動物園、水族館、植物園、遺伝子バンクなどが遺伝子の多様性の保存に重要な役割を担っている。
名古屋の会議では、生物多様性を維持するために2050年に向けての長期的なプランを作成することを主な目的にしている。生物多様性を失わせている究極の原因、直近の脅威を明らかにし、科学、政治、経済、社会の共同作業を進めることが大切になる。そのためには国際的な協力体制を確立し、経済的な支援を特に発展途上国にすることが求められている。具体的な財政支援を通して初めて、自然とわれわれの利益になる実効性のある生物多様性の保護が可能になるだろう。
ところで、先日のサンディエゴの会議では "One World, One Health" という考えた方が取り上げられていた。それは、われわれの健康がわれわれを取り巻くひとつの世界によって決められているということを意味するもので、ある病気を見る時にその人がいる環境の中で起こった異常として捉える視点の大切さを説いたものである。実際に、ある病気が急に増えたり、逆に急に減少した例が示されていたが、調べてみるとそれは医学そのものの進歩や停滞によるのではなく、世界的な環境の変化や社会体制の乱れによる医療の破壊などが原因であることが明らかにされていた。
アフリカで見られる水を介する感染症などでは、ワクチンの投与よりも水を濾過するやり方を教える方が病気の予防に役立つ例なども紹介されていた。それから広い世界には動物と寝食を共にしている人たちが相当数おり、常に病気の原因とともに生活していることになる。さらに、環境の変化により、それまで出会うことのなかった生物との接触が生まれ、新たな病気が出現する可能性も考えなければならない。
これらはサンディエゴに向かう機内で読んだルウォンティンさんの視点ともよく重なる。このような広い視野を持つことが、これからは重要になりそうである。