火の形而上学 La métaphysique du feu |
しとしとと雨の降るメランコリックな一日。
そこにいつ辿り着くのかわからないが、興味深い糸が見つかった。
今年からアリストテレスの 「形而上学」 をフランス語で読み始めている。気分の向いた時だけなので、なかなか進まない。最近、この世界を構成する元素として古代人が火を加えていたことに触れた。それに関連した記載がアリストテレスの中に見つかった。「形而上学」 の最初の方だが、そこでは世界の基にある物質を探ろうとした哲学者の営みを振り返っている。先日の記事に書いたお話が、アリストテレスによりついこの間の過去として語られているので興味が尽きない。その分析によると、彼の先達は火は基本的にものを動かす性質により駆り立てられるのに対して、水、土や同様の物体は全く反対の運動によると考えていたようだ。やはり、ソクラテス以前の哲学者は火の中にある躍動するものに何らかの意味(前回は創造性を触媒するような力と形容したが)を見出していた可能性がある。
ところで、四元素説を唱えたエンペドクレスだが、ウィキによると相当にエキセントリックな人物だったようだ。真面目で、鬱気質で、独創的。緋色を身に纏い、長い髪の頭にはデルポイの冠を載せ、近づき難い表情をしていたという。預言者を気取っていたのかもしれない。その彼は、異論はあるようだが、最後はエトナ山の火口に飛び込んだ。この話に霊感を受け、ヘルダーリンが劇詩を書いている (「悲劇 エムペードクレス」 岩波文庫、1953年)。また、ガストン・バシュラールが四元素である土、水、空気、そして火について作品を残している。" La Psychanalyse du feu " (「火の精神分析」せりか書房、1999年) の第二章はエンペドクレスに充てられている。まだまだ繋がってきそうな気配のするところである。
ところで、先日 iPad のようにノートを使うことを覚えてから、
ソファで横になることが多くなってきた。
その快適さに溺れそうで少々心配している。