科学を哲学することについて話す |
本日、わたしにとっても学会にとっても初めての経験をする。話の内容もそうだが、科学の学会で1時間の時間をいただいたのは今回が初めてになる。朝、お話の内容を通して読み直してみると、何と10分以上の時間超過。思いきってスライド5-6枚をカットしてから会場に出かける。座長のT先生と早い昼食をとりながら、最近の日本の研究状況や四方山話をする。このご時世で科学と哲学というテーマで果たしてお客さんは集まるのかと素直に心配されている。その心配を共有しながら会場に行くと、ほぼ満席になっていて驚く。T先生の方は安心した様子であった。
今回のお話はこれからまとめることになるが、哲学的態度を時間的空間的な距離を置いて対象を見ようとする態度と考えて、その対象として単に科学の中の事象に止まらず、科学そのものを取り上げる重要性について触れた。特に科学そのものについて考えるということは、最近の科学を取り巻く状況を考えるとこれからますます重要になるはずである。まずこのような視点を持った研究者が増えてこなければ、科学の存続自体が危ぶまれるだろう。そのためには必然的に科学教育や普及活動の在り方を見直さなければならなくなる。一体、科学のどこがわれわれの存在にとって不可欠なのかについての考えを深めなければならないだろう。その上で、共通の認識を持った一般の人を増やしていかなければならない。気の遠くなるような道である。まさに文化は一朝にして成らずだろう。
こんなところが一つのテーマであった。真剣に聞いていただき、日頃から感じている率直な疑問についての発言も見られ、反応は予想外によかったという印象がある。これからもこのような機会を積極的に捉えて科学のあり方を考えていきたいと改めて思っていた。