級友とのディネ、あるいはウマル・ハイヤーム Dîner avec mes collègues, ou Omar Khayyam |
昨日は研究所の後、Paris 7 で一緒の学生さん二人とサンジェルマン・デ・プレの日本食レストランでディネとなった。後期のクールは Paris 7 だけになり、今週で終わることになる。二人とも日本食は抵抗がないようで、左の学生さんは自分でもたまに巻くと言っていた。その彼は、テーズの奨学金のプレゼンテーションが控えているので少々緊張気味であった。本来、お酒はあまり飲まないとのこと。
先日フランスの先生と学生の上下関係がかなりがっちりしていて権威主義的な雰囲気があることについて触れたが、そのことを窮屈に感じていないか聞いてみた。外国でも学生生活を送っている彼は、すぐにフランスのスタイルが特異であると答えていた。アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは両者の関係がもっとオープンで、ディスカッションもより活発に行われていて、そちらの方がよいと考えているようであった。
彼は昨日もそうだったが、先週のクールにも patinette で来ていた。今までは子供の乗るものだと思っていたが、妙齢のご婦人や紳士が颯爽と街を行く姿を見ることができる。実は、先週のクールの後に紹介された大学近くの店で試してみたが、なかなかよいことがわかった。現在、散策に取り入れるべく前向きに検討中である。
右側の方は先生をやっていて、自由に使える1年を大学での研究に充てることにしたようである。彼もなかなか親切で、フランス語でお世話になったこともある。クールでは一番活発にディスカッションに加わっている。現在40歳前半とのこと。私の年齢にも興味があるようで、自分の年よりも上か下かだけでも知りたいという質問だったので、これは相当の誤解があると思い、あまり驚かせないように、人生は数字ではない (これは私の基本にもなっているので) と言ってお茶を濁しておいた。Mais... という声が聞こえていたが、、、
彼は私がお酒を注ごうとすると "doucement, doucement" と言って進まない。人生偶には酔うことも必要、と私が言うと、あなたにぴったりのこの人を知っているかと言って、11世紀から12世紀にかけてのイスラムの polyvalent, polymathe (英語では polymath) を紹介してくれた。
ウマル・ハイヤーム (Omar Khayyam, 18 mai 1048 - 4 décembre 1131)
数学、天文学に通じ、詩人で哲学者でもあったという。彼の詩は四行詩 (ルバーイイ, les quatrains) で、俳句や短歌に似ているのではないかとのこと。その時はピンとこなかったが、ウィキを見てみると、その詩集を 「ルバイヤート」 と言うとある。この音には馴染みがある。その昔、どこかで習った記憶が蘇ってきた。彼についての情報はネットに溢れているのではないかと思うが、目に触れた詩はこんな具合である。
Dreaming when Dawn's Left Hand was in the Sky
I hear a Voice within the Tavern cry,
"Awake, my Little ones, and fill the Cup
Before Life's Liquor in its Cup de dry."
Come, fill the Cup, and in the Fire of Spring
The Winter Garment of Repentance fling:
The Bird of Time has but a little way
To fly―and Lo! the Bird is on the Wing.
Here with a Loaf of Bread beneath the Bough,
A Flask of Wine, a Book of Verse―and Thou
Beside me singing in the Wilderness―
And Wilderness is Paradise enow.
(Rubaiyat of Omar Khayyam, Oxford U Press, 2009)
酒が常にあり、この世のものを味わい尽くそうとする気持ちが迸り出ているように聞こえるが、、、
こちらに来て嬉しいのは、人と会うといつも予想もしないお土産をいただいて帰ってくることだろう。このような豊穣の泉がひょんなところから顔を出したりする。日本ではほとんど目が行かなかったイスラムの文化を近くに感じるようになっていることにも気付いている。歴史を見直せば、彼らがいなければギリシャの文明は西洋には伝わらなかったことになるが、一体そこにはどんな人物がいたのだろうか。これから少しずつ漁って行きたいものである。