ユネスコの哲学教育報告 |
いよいよ師走である。先日の世界哲学デーでいただいたユネスコの2007年の哲学教育に関する報告書をぱらぱらとやる。まず表紙に目をやると、哲学と自由が深く関連しているのがわかる。この書によると、自由と厳密な思考を学ぶことが哲学であると捉えている。小学校レベルまでの教育についても触れられている。P4C(philosophy for children)、あるいはPwC(philosophy with children)などと言われている。そもそも子供に哲学を教えるのがよいことなのかどうかという倫理問題まで含めて議論されている。ヤスパースなどは子供は本来哲学的なのだと考えているが、プラトンは早くから哲学をやると人間が懐疑的になり虚無主義に陥る危険性があると指摘し、デカルトも哲学することは子供であることを止めることであると言っている。
この中で日本の現状についても簡単に触れられている。それによると、高校で公民という教科はあるが、そこでは倫理・道徳に重点が置かれ、哲学的な思考が教えられることはないと見られている。また、日本での哲学は人生の意味を考えるというようなところに矮小化される傾向があるとも書かれてある。自由の本質を考えたり厳密にものを考えることが苦手で、いつまでも子供であることを止めない背景には、哲学の洗礼を受けていないことがあるのかもしれない。日本の現状を見て哲学者はどのように考えているのだろうか。象牙の塔から発信していただきたい気もする。
話は飛ぶが、子供はよく、それはどうして?、なぜなの?(pourquoi ?)と聞く。世界共通だろう。ところが、こちらの子供は小学校に入る前からそこで止まらず、なぜなら・・・(parce que)と自らが語る。親との会話を聞きながら、日頃からそう訓練されているのだろうと思ったことがある。それがこちらの文化なのだろうと印象付けられたことが何度かあったことを思い出した。