ヤン・サップさんとの再会 Retrouvailles avec Dr. Jan Sap |
本日は研究所でのセミナーの後、不思議な再会のため大学に出掛けた。
2週間ほど前だっただろうか。大学のサイト内を当て所もなく眺めている時、見慣れた名前が現れた。写真のヤン・サップさんである。よもやこんなところで出会うことになろうとは思ってもいなかったので、早速メールを送るとすぐに返事が来て今日のランデブーとなった。
彼とは同じ領域で研究していたので、会などで顔を合わせていた。もう15年ほど前のロッキー山脈での会が最後ではなかっただろうか。彼は当時ニューヨーク大学にいたが、今日お話を伺ったところ、15年を超えるアメリカ生活の後、ヨーロッパに戻る気持ちになり、5年前にデンマークの大学に職を得たという。彼はベルギー出身で、母国語はフラマン語。7カ国語を操るとのことだが、デンマーク語は初めてだったので次第に言葉がフラストレーションになり、2年前にフランスに来たとのこと。私がフランス語を始め世界が広がったと感じているが、7カ国語の世界はどんなものなのだろうか。彼自身もこの点についてディスカッションしたことがあるらしいが、母国語だけの世界との違いはわからないようだ。
話が始まると、すぐに私の新しい道についての質問が始まった。よくよく聞いてみると、ベルギーのルーベンで大学に入った年に科学哲学のコースがあり、興味を持ったことがあること、それから数年前から哲学書、特に古代ギリシャやローマ時代の哲学者のものを読み始めていること、つまり哲学的に世界を見ることに意味を見出していることを話してくれた。ただ、研究に集中しなければならないのでなかなかその時間が取れないのが悩みとのこと。その合間を縫って、哲学カフェにも参加している他、英語の一般的な表現を磨くことも意識してやっているようだ。次の哲学カフェに一度様子を見に来ては、とお誘いを受けた。この他、大学にいる関連分野の科学者や科学の歴史や哲学の研究者、さらに自然を哲学した書などの貴重な情報もいただいた。
話を伺いながら、すべてがそうだとは言わないが、ヨーロッパの研究者に見られるあるタイプを体現しているように感じていた。また、これほど似たような意識、世界観を持っているとは想像していなかっただけに、嬉しい再会となった。現代フランスではジャック・モノやフランソワ・ジャコブ以来、自然現象や科学の領域を哲学的に考える伝統が深く息づいている。これからもこのような繋がりを生かしながら少しはまともな思考に向けて歩みたいものだと改めて思っていた。2時間ほどのランデブーが新しい窓を開けてくれたように感じながら、雨の街に出た。