バカンスの終わりに |
長いバカンスがやっと終わりを迎える。
アパルトマンを出た時の心の中を思い出すことは最早難しい。
日数からは想像できないほどの出来事があったということだろう。
この間、貴重な時間を割いていただいた方々にはただ感謝しかない。
その出会いがなければ今の私はないという感覚が年とともに深まっているからである。
全身の感覚器が最高の感度で周囲の刺激に反応する。
その反応の結果、この存在が周りの世界に溶け合うような感覚を伴っている。
行く町々で惹起される異なる反応。
それに合わせて手に入れる本も変わってきた。
日本にいる間、フランス語は一言も出て来ず、読もうという気にもならなかった。
読むつもりで持ってきた本は少なくないにもかかわらず。
飽くまでもこの環境で一番しっくりくる言葉で考え、読もうとしていた。
先日手に入れたブックカバーを使おうとでも思ったのか、今日も文庫本を多めに仕入れていた。
このバカンスではこれまで溜まっていたものが流れ去ってしまったような感覚もある。
パリに戻ってフランス語は出てくるだろうか。
やりかけだったことに入って行けるだろうか。
その昔、アメリカに滞在して4-5年目だっただろうか。
今ここにいるのはこれから生きていくための内なるモーターを造るためではないのか、
さらに、それができたと感じるまではここに留まろうという思いが生まれていた。
フランス滞在3年を終えた今、同じような思いが湧いている。
それはこの滞在でも内なるモーターを求めているのではないか、というものだ。
筋の通った思考を進めるためのモーターとでも言えるものを。
それを今の営みを通して掴み取ろうとしているように感じる。
今回のバカンスでは年頭に考えたキーネーシスとエネルゲイアの違いが再び浮んでいた。
そして、「今が目的」であるエネルゲイアが今も大きなテーマとしてここにあることを再確認。
その歩みを蓄積することこそ、生を全うするための有効な道であることを。
明日、パリに向かう。