初めての研究所 ISC-PIF にて |
今日は初めての研究所へ。こちらの研究所や大学の施設ははっきりそれとわかることもあるが、自己主張しないこともある。何気ない住宅街の中にあったり、周りの景色と連続しているので探すのに苦労することがある。この研究所もその類だろうが、最近は慣れてきている。観光地にもなっている無国籍のムフタール通りを跨いでいくとその研究所はあった。略称ISC-PIF (Institut des Systèmes Complexes-Paris Île de France)、パリ・イル・ド・フランス複雑系研究所。
以前から興味はあったが触れる時間がなかったこの領域の雰囲気を味わうことが目的。今日の演者はドイツのケルン大学理論物理学研究所のミヒャエル・レーシッヒさん。分子進化がテーマであるが、到底理解したとは言い難い。記憶に残っているところから少しだけ。
遺伝子が活性化するためには、その周辺のある幅を持った場所(塩基配列)に分子(転写因子)が結合する必要がある。今日のお話は、その塩基配列に起こる変異をどう考えるのかから始めていた。一つひとつの塩基の変異が遺伝子発現(表現型)に与える影響を調べ、それぞれの機能を推定する。ここでの機能とは転写因子の結合になるが、それがいくつかの生物で保存されていて、生物の生存に有益であることが求められる。一つひとつの塩基は独立に機能し、進化するが、同時にその場を構成している他の塩基と協調して転写因子の結合、遺伝子の発現を調節している。その調節メカニズムについて研究しているようであった。
以前の専門領域で表現型と言えば細胞の働きであったり、動物個体の状態であったので、今日の研究対象は数段下がり、さらにミクロの世界に入っている。しかも、数式が出てきて、コンピュータ解析によるモデル作成となると、なかなか実感が湧かない。
セミナーにはマスターの時に一緒だった物理学専攻の学生さんが来ていたので、今興味を持っていることを話すと、関連することをやっている人の名前がすぐに返ってきた。とにかく話し掛けることだろう。
話し掛けると言えば、この研究所に入ってすぐにメンバーの方々と言葉を交わすという興味深い経験をした。それが可能だったのは、この研究所の構造も複雑?だったからだろう。こじんまりしたところのせいか、入るとすぐに小さなオープン・スペースがあり、そこに机が出ていて研究員や広報担当の方が座っている。さらに、左右にはオープン・コーナーがあり、そこにも人がいるので声を掛けやすいのである。コミュニケーションが取りやすい心理状況を作ってくれる配置になっている。
セミナーまでに時間があったので、許可を得て写真に収めてきた。セミナー会場が建物の中央にあり、吹き抜けになっている。そこが地下で、表の通りからの光が上から入る。その周りにはガラス一枚で隔てられたセミナー室がある。さらに、研究員のいる場所がオープンに配置されているため、中央ホールに面した人はセミナーのお話がいやでも聞こえてくる。それが雑音になるのか、音楽になるのか、思わぬアイディアが湧いてくることになるのか。とにかく、その場を構成している人が交わらざるを得ないような構造になっている。今日のお話のテーマにもなっていた modularity / integration / cooperation という言葉が浮かんでいた。