科学の後はポエム、そして再び驚きの展開 |
今日は大学のセミナーへ。演者はアリゾナ大学でエコロジーと進化生物学の研究をしている方で、主なテーマは単細胞生物から多細胞生物に移行する時に何が起こっているのか、何がその過程を決めているのかについてであった。一つは細胞の役割分担が生まれること、特に生殖に関わる細胞とそれ以外の体細胞という2種類の細胞ができることが大きな要素になる。それから、対立から協調に至る過程を調節しているものがあり、その候補として免疫系や細胞死を考えているようであった。
細胞の死に方には大雑把に言って、細胞の中身が周辺にばら撒かれる壊死と周辺への影響が出ないように細胞の中で処理されるプログラムされた細胞死がある。彼らの使っている単細胞生物でも後者の細胞死が見られるという。前者のような死に方をさせると周辺への負の影響が出て細胞が死んでしまうようである。したがって、プログラムされた細胞死が起こるような状況でなければ細胞が塊を作り、多細胞生物への道を歩めないという。細胞を取り巻く社会的要素が重要になるというお話であった。
対立と協調という点で興味を引いたのは、生物学の成果を人間社会に当てはめようとする場合の問題である。それは、システム内の対立を最小限にしようとするのか、対立が起こることは認め、その後の協調を如何に有効に作るのかという視点の違いになる。対立後にそれ以前よりは良好な協調関係が生まれる可能性があるので、対立は不可避なものとして処理するオプションもあり得る。現実的にはどのように考え、どのような方策が練られているだろうか。守備範囲外になるが、面白そうな問題である。
セミナー後は周辺を散策。サンジェルマン・デ・プレでは久し振りにポーランド書店の前を通る。そこで昨年(2009年4月16日)クラクフで発見したアダム・ザガイェフスキさんの仏訳本が展示されていたので中に入る。昨年と同様に抵抗なく入ってくるので、2冊仕入れることにした。
Palissade. Marronniers. Liseron. Dieu (Adam Zagajewski)
Mystique pour débutants (Adam Zagajewski)
支払いの時、この著者を発見した経緯などを書店主と話していると、それだったらと言って、また何というタイミングだろうかという情報を教えてくれる。今夜7時からザガイェフスキさんの朗読会がアメリカン大学であるという。学校の後、予定を変更してそちらに向かうことにした。本当にこういうことが続いてよいのか、という印象があるが、その驚きに慣れることはない。これが繰り返されると、体がだんだんもたなくなってくる。