懐かしい仕事の話を聞き、哲学生活について語る |
春らしい空気の今朝、ドクター1年目の研究概要を最終的にまとめて事務局に送る。今回も見直す度に細かいミスが目に入り、驚く。どうしてそれがすぐにわからないのか、という思いである。最近では日本語でも目の前の誤りに気付かなくなっているので、これからは必ず間違っていると思って校正しなければならないだろう。
昨日、研究所のセミナー案内にゲッティンゲン大学のJürgen Wienandsさんの名前を見つける。もう10年以上前になるが、ドイツのフライブルグを訪問した際、まだポスドクとして研究していた彼に会ったのが最初になる。それ以来、研究領域が重なっていたこともあり、何度かお会いしている。挨拶をして今の状況を話すと驚いてくれるのかと思いきや、人生を完成するためにここにいるのですね、パリの生活はどうですか、との返答で、逆にこちらが驚く。こういう何気ない反応は私を喜ばせてくれる。
セミナーのテーマは、抗体を作るのが一つの仕事であるBリンパ球が病原体を認識し、その情報をどのように細胞の中に伝え、最終的に抗体の産生に至るのかというシグナル伝達の問題で、彼らがこれまでに見つけた分子を中心に話を進めていた。今回重点を置いていたのは、機能の違う抗体(IgM、IgG、IgEなど)を作るリンパ球において、情報伝達する過程のどこに違いがあるのかという点で、きれいな結果が発表されていた。登場する役者が限られていて、考え方が明確なのでわかりやすい話になっていた。還元主義の極致だろうか。
セミナーの後、こちらに来る前のみならず来てからもお世話になっているMD氏にデジュネに誘っていただき、久し振りに大学生活や哲学の進行状況について話が弾む。お話によると、彼もあと数年で定年になるとのことで、その後のことを考え始めている様子であった。哲学も一つの選択肢に入っているようだが、私のようにそれを改めてというのではなく、日常の営みとしてではないかと想像していたが、、。彼とは毎月開かれる科学と哲学について話を聞く会でもご一緒しているので、一月後ということで別れた。
それからビブリオテクでじっくり一仕事と思ったのはよかったが、気分が解放され、しかも眠気が襲ってきたので早めの帰宅となった。