サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して "The Pilgrimage" by Paulo Coelho |
昨日の午後、サンディエゴ、サンフランシスコ、フランクフルトを経てパリに帰ってきた。サンフランシスコからフランクフルトに向かう飛行機が扉の不調で2 時間遅れる。そのためフランクフルトでは滑り込みで辛うじてセーフ。飛び込んだ飛行機は新車の匂いがしていた。初めての経験である。最後に飛び込んだためか、パリでは荷物が一番最初に出てきて快適であった。パリを離れて1週間ほどだが、温かさが増し、日が暮れるのが1時間ほど遅くなっているように感じ、心が浮き立つ。
サンフランシスコ空港でのこと。non-fiction のコーナーを見た後に出発カウンターに戻り、時間があったので再び入った本屋さんの fiction コーナーを見渡している時、この本が飛び込んできた。それは、
"The Pilgrimage: A Contemporary Quest for Ancient Wisdom"
by Paulo Coelho (パウロ・コエーリョ、1947年8月24日生)
1987年の作品で、原題は "O Diário de um Mago"、1992年に "The Diary of a Magus" として出ている。なお、日本語訳は 「星の巡礼」。
この著者の本は、もう何年も前のこと、日本からアメリカ出張の折に "By the River Piedra I Sat Down and Wept" (原題 "Na margem do rio Piedra eu sentei e chorei", 1994年) をなぜか仕入れている。日本語訳は 「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」。しかし、帰って読んだが全く入って来ず、日本の本棚のどこかに眠っているはずである。
ということで、今回は彼の作品というよりはサンティアゴ・デ・コンポステーラという文字を見つけ、読んでみる気になっていた。この地名は、数年前のNHKテレビが巡礼者を追っているのを見て、強い印象を残していた。おそらく、その時のことを思い出したのだろう。早速機内で読み始めたところ、今回は不思議なことにどんどんと入ってくる。ひとつには以前とは違い日常や理性から離れ、しかも読んでいる自分の身も宙に浮いていること、それから日頃読んでいるものとは比べものにならないくらい表現がやさしく付いて行きやすいこと、そして著者が言いたいことに近いことをこれまでの間に感じていることなどがその要因だろうか。
最後に著者の英語版のためのあとがきがある。その中に、彼が巡礼した年には年間400人の巡礼者だけだったが、1999年の非公式な統計では一日に400人がサンティアゴへの道を歩いているとある。この本を読みながら、いずれ私もその中の一人に加わってみたいものだと思っていた。しかし、さらに読み進むうちに、ひょっとすると今のこの歩みこそ、サンティアゴ・デ・コンポステーラがどこにあるのかはわからないが、そこに向けてのひとつの巡礼のようなものではないか、という気分が襲っていた。